今年も暑い夏の季節がやってきました。
水分やミネラルを摂取するためにスポーツドリンクを飲んだり、さっぱりした飲み物として飲むお酢を飲む方も多いのではないでしょうか。
また、日々の疲れた体にエネルギーをチャージするため、頻繁に栄養ドリンクを飲む方もいらっしゃると思います。
素早くエネルギーや水分を摂取できたりスッキリできるこれらの飲み物、暑い夏にはついついたくさん飲んでしまいたくなりますが、歯への影響を考えたことはありますか。
実はスポーツ・栄養ドリンクや飲むお酢は、飲み方によっては歯に悪影響を及ぼすのです。
酸蝕症とは
酸蝕症とは、酸性の食べ物や飲み物によって歯が溶けてしまう現象です。
私たちの歯は酸性に弱く、酸性の飲み物に長時間・頻繁にさらされると歯の表面を覆っているエナメル質がだんだんと溶けてしまいます。
これは、エナメル質を構成する無機成分(カルシウムやリン酸)が溶けだしてしまう(脱灰される)からです。
また、エナメル質の下にある象牙質はさらに柔らかく、咀嚼や歯磨きの際の摩擦でどんどんすり減ってしまいます。
酸蝕症になってしまうと、
- 知覚過敏になり、冷たいものがしみたり歯磨きで痛みを感じる。
- 象牙質がむき出しになることにより、歯全体が黄色く見える。
- 歯が透き通って見える。
- 歯がすり減りやすくなるため、へこみや溝ができやすくなる。
など、歯に多くの悪影響を及ぼします。
では、この酸蝕症、スポーツ・栄養ドリンクや飲むお酢とどのような関係があるのでしょうか。
酸蝕症と飲み物の関係
実はこれらの飲み物はすべて、酸性度が高いのです。
歯のエナメル質はpH5.5以下で溶けていきます。
pHとはその液体が酸性なのかアルカリ性なのかを表す尺度です。
pH7が中性であり、pHの値が7より小さいと酸性、7より大きいとアルカリ性となります。
スポーツ・栄養ドリンクやお酢はpH2.5~3.5と強い酸性であり、さらにpH5.5以下ですので歯のエナメル質が溶けていきます。
普段私たちの歯は脱灰されても、唾液の働きにより歯の表面のエナメル質は戻っていきます。
これは、唾液によって歯の表面が中性にもどり、カルシウムやリン酸が歯の表面にもどるからです。これを再石灰化といいます。
しかし、酸性の飲料水の飲み方によってはこの脱灰と再石灰化のバランスがとれなり、脱灰の時間のほうが長くなってしまう結果、歯が酸蝕症になってしまうのです。@>
糖分
皆さんもご存じの通り、これらの飲料水にはたくさんの砂糖が含まれています。
ミュータンス菌を主とする虫歯菌は、糖分から酸を作り出します。
この酸が酸蝕症のときと同じように歯のエナメル質を溶かしてしまうのです。
その結果、歯が虫歯になってしまします。
酸蝕症と虫歯の違いは、外部か摂取した酸による症状か虫歯菌によって生み出された酸による症状かです。
ではどのような飲み方をすれば酸蝕症や虫歯のリスクを減らすことができるのでしょう。
酸性の飲み物による酸蝕症・虫歯の予防
過剰摂取を控える。
これらの飲み物を飲むことは私たちにとって必ずしも悪いことではありませんが、頻繁に飲むと再石灰化と脱灰のバランスが崩れてしまいます。飲みすぎには注意しましょう。
だらだら、ちびちびと長時間飲まない。
酸性の飲み物をだらだら長時間飲んだりちびちび飲むと、液体が歯に接触する時間が長くなり、再石灰化が行われる前に歯がどんどん溶けていってしまいます。
唾液の分泌を促す。
再石灰化の説明からわかるように、唾液は酸性度の高くなってしまった歯の表面を中性に戻す作用があります。ブログ内でも紹介した唾液腺マッサージを行うのもよいでしょう。
寝る前に飲むのを控える。
就寝中は唾液の分泌量が少ないため、pHが酸性から中性に戻りにくくなります。
酸性の飲料水を摂取した後は、お口をゆすぐ。
酸性飲料水を摂取した直後の歯磨きは控える。
酸性飲料水摂取直後の歯はエナメル質が柔らかくなっているため、すぐに歯磨きをしてしまうと歯が削れてしまいます。30分ほど待ってから歯磨きをしましょう。
歯科クリニックでフッ素を塗る
フッ素は歯の再石灰化を促すとともに、歯の表面のエナメル質を酸に溶けにくい性質に変えることで、酸に対する抵抗力を高めます。(当院でも施術?を行っておりますので、気軽にご相談ください。)
スポーツ・栄養ドリンクや飲むお酢は体には良い影響ももたらすものかもしれませんが、飲み方を間違えると私たちの大切な歯に悪影響を及ぼしてしまします。
飲み方に注意し、健康的な歯を守りましょう。